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モエ・エ・シャンドン醸造最高責任者来日セミナー

http://news.nifty.com/cs/headline/detail/yucasee-20090901-1525/1.htm
2009年9月1日(火)9時40分配信 ゆかしメディア

モエ・エ・シャンドン醸造最高責任者来日セミナーレポート

■35歳の若さで醸造最高責任者になったゴエズ氏

 1743年の創立から260年もの間、シャンパン最大手の地位を守り続け、人々に愛され続けてきたモエ・エ・シャンドン。そのモエ・エ・シャンドンの醸造最高責任者ブノワ・ゴエズ氏が7月後半に来日し、7月27日、田崎真也ワインサロンにてシャンパンセミナーが開催されました。これはワインサロンの上級者クラスの授業の1つとして行われたもので、一般からの参加者はモエ・エ・シャンドン公式HPの会員数名のみ。その記念すべきセミナーにYUCASEE MEDIA(ゆかしメディア)も潜入しました。

 ブノワ・ゴエズ氏はフランスのブルターニュ地方出身。1999年にモエ・エ・シャンドン社に入社し、2005年に35歳の若さで醸造最高責任者に就任しました。伝統を重んじながらも、常に革新的なシャンパン造りにチャレンジし、新たなモエ・エ・シャンドンの魅力を開花させたことで知られています。

 セミナーの前に、ゴエズ氏に今回のセミナーについてお話を伺うことができました。
ゴエズ氏「今回は田崎さんのワインサロンでのセミナーですが、田崎さんと知り合ったのは5~6年前でしょうか? もっと前かな?(笑)日本にはここ10年くらい毎年1度ほど来ていますが、ワイン教室でのセミナーは滅多になく、このような機会をくれた田崎さんに感謝しています。

今回は、モエ・エ・シャンドンの代表的なシャンパンがフルレンジ出ますよ。単なるテイスティングではなく講義に近い形なので、味だけではく、技術的なことやワイン造りの過程もお話できると思います。ノン・ヴィンテージとヴィンテージがどう異なるのかなど、モエのスタイルをしっかり伝えることができればと思います。

日本の方には、もっと色々な機会に、多くのシャンパンを飲んでいただきたいですね。日本の方はあらゆることに対しての意識が高く、また何かを学ぼうとする意欲が高いです。それは、モエ・エ・シャンドンのシャンパンの価値観と似ていると、私は思っています。今日のように、日本人にもっとシャンパンの良さを知っていただく機会が増えれば嬉しいですね。」

 日本食では季節の懐石料理が好きで、日常的には天ぷらをよく食べるというゴエズ氏。もっと日本の生活にシャンパンが浸透してくれれば嬉しいと、笑顔で語っていました。セミナー開始前にはワインサロンの生徒さんたちで席がいっぱいに埋まり、田崎真也氏も開場入り。ゴエズ氏と田崎氏の両方の解説が聴くことができるという、贅沢なセミナーがスタートしました。

■6種類のシャンパンをテイスティング

 今回出たシャンパンは、ノンヴィンテージの「ブリュット アンペリアル」「ロゼ アンペリアル」「ネクター アンペリアル」、ヴィンテージの「グラン ヴィンテージ 2003」「グラン ヴィンテージ ロゼ 2003」「グラン ヴィンテージ 1995」の6種類。定番の味からレアなヴィンテージまで、フルコースを味わうようにシャンパンが次々と出てきます。セミナーの内容としては、モエ・エ・シャンドン社の歴史や伝統、現代のシャンパンの傾向、ノンヴィンテージとヴィンテージの違い、シャンパンの質を保つための苦労などでした。

 モエ・エ・シャンドンは1743年設立という長い歴史と伝統がある、世界最大のシャンパンメゾン。同社はシャンパーニュ地方で最も畑の所有面積が広く、1000ヘクタール以上のクオリティの高い畑を所有しています。260年の歴史が培った伝統にももちろん重きを置きますが、時代に合わせて革新していくことが大事だという、シャンパン作りにおける同社の哲学が詳しく語られました。

 歴史という部分では、セミナー参加者からの質問に答えるかたちで、ナポレオンとモエ・エ・シャンドンの関係も紹介されました。モエ・エ・シャンドン創設者の孫は、ナポレオンと同じ兵隊学校の生徒だったそうです。2人は仲の良い友人であり、ナポレオンは出兵する際、いつも同社に立ち寄ってシャンパンを飲んでから出かけていました。「ブリュット アンペリアル」などの商品名の一部になっている「アンペリアル」は、元々ナポレオンに敬意を表して付けられたことが始まり。フランスの歴史に寄り添う同社だからこそのエピソードだと言えるでしょう。

 技術的な部分では、ノンヴィンテージとヴィンテージの違いについて。ノンヴィンテージは3種類のブドウをバランスよく配合して作る、各シャトーのスタイルと個性を表現する味です。伝統を守り、毎年同じ味とクオリティを保つ必要があり、フィギュアスケートで例えれば規定演技のようなもの。一方ヴィンテージは、収穫した年のブドウの特色を自由に表現できるため、フィギュアスケートのフリー演技のようなものと解説されました。また近年は人々の生活スタイルや嗜好の変化に合わせて、シャンパン造りの際の加糖(ドザージュ)を減らす傾向にあるとのことでした。

■モエ・エ・シャンドンの定番「ブリュット アンペリアル」

 初めはモエ・エ・シャンドン社の基本となる「ブリュット アンペリアル」。ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、シャルドネの3種のブドウのバランスを重視したノンヴィンテージのシャンパンです。緑がかった淡い黄色で、フレッシュフルーツの爽やかな香りや白い花のようなやわらかな香りが楽しめます。しなやかな口当たり、芳醇な味わいで、余韻が長続きします。

■濃いピンク色がキュートな「ロゼ アンペリアル」

 あたたかみのあるピンク色がキュートな、ロゼシャンパン「ロゼ アンペリアル」。野イチゴを想わせる甘くてフルーティな香りが特徴です。味わいははっきりとした果実味と凝縮感が感じられます。

 ノンヴィンテージのロゼシャンパンがつくられるようになったのはごく最近のことで、それまではヴィンテージのみだったそうです。モエ・エ・シャンドンでは95年に初めて、「新しいロゼシャンパン」というコンセプトのもとにリリース。他社のロゼより熟成感・凝縮感があり、かつライトで飲みやすく仕上げられています。

■猛暑の年が生んだ「グラン ヴィンテージ 2003」

 グランヴィンテージの中でも別格とされる2003年のヴィンテージ。モエ・エ・シャンドンの最初のヴィンテージシャンパンは1842年で、2003年は68番目のヴィンテージとなります。

 2003年、ヨーロッパは例外的な猛暑の年となり、その猛暑のお陰で果実の濃厚さ、複雑さ、スパイシーを兼ね備えた素晴らしいシャンパンとなりました。ドザージュの量は少なめに、自然な味わいを大切に作られました。この年のブドウは猛暑のため収穫量が1985年以来最低。グランとロゼ両方のヴィンテージを造ることに成功したグラン メゾンはモエ・エ・シャンドンのみでした。

■凝縮感があるロゼ「グラン ヴィンテージ ロゼ 2003」

 猛暑のお陰で別格の素晴らしさとなったグラン ヴィンテージ 2003のロゼ。同社のロゼは赤ワインの比率が他社より高めで凝縮感を味わえますが、ライトな余韻で飲みやすいのが特徴です。イチゴのような果実系のフルーティーでしっかりとした味わいが楽しめます。

 モエ・エ・シャンドンではその年に収穫されたブドウの最も良いものを使い、10年の間に6~7年はヴィンテージをリリース。7年くらい長めに熟成されるものが多いそうです。

■貴重なヴィンテージ「グラン ヴィンテージ1995」

 このセミナーのため用意された、貴重な1995年のヴィンテージシャンパン。淡い黄色で、ほのかに蜂蜜のような甘さがあるフレッシュな香りが特徴です。凝縮感がありつつもすっきりとした味わいで、まろやかで甘みがあります。こちらもドザージュは控えめで、自然の甘さを活かした味わいになっています。

■冷やして飲む甘いシャンパン「ネクター アンペリアル」

 デザート感覚でよく冷やして飲むのが美味しい「ネクターアンペリアル」。金色を帯びた黄色で、パイナップルやマンゴーのようなトロピカルフルーツの濃厚な香りが広がります。他のシャンパンよりも、しっかりとしたリッチな甘さがあることが特徴。単体で飲んでも良いですが、クリーミーなソースを使用した魚料理や肉料理にもマッチします。日本ではどちらかというと甘くないシャンパンが人気ですが、海外では甘いシャンパンもよく飲まれているそうです。

 終始なごやかなムードで行われた、今回のシャンパンセミナー。ゴエズ氏の解説の後、田崎氏による補足説明という形で進んだため、内容も理解しやすく、参加者の皆さんもそれぞれのシャンパンの魅力を存分に堪能できたようです。ゴエズ氏のシャンパンへの愛情とプロフェッショナルな視点を通して、モエ・エ・シャンドンとシャンパンの世界の奥深さをあらためて知ることができた、貴重な2時間となりました。

【ブノワ・ゴエズ氏 プロフィール】
モエ・エ・シャンドン シェフ・ド・カーヴ(醸造最高責任者)
フランス・ブルターニュ地方出身。カリフォルニア、ニュージーランド、オーストラリアのワイナリーで修行。その後、南仏プロバンスでワイン造りを経験し、モエ・エ・シャンドンの当時の醸造最高責任者と出会い、99年にモエ・エ・シャンドン社に入社。ニューワールドワインの革新的な部分も理解しながら、伝統を重んじる考え方が同社のシャンパン作りのスタイルと合致していたことから、2005年に35歳の若さで同社の醸造最高責任者に就任した。

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