今夜は急に冷え込みましたね!
昨日は店内が暑くて、一時エアコンをドライに合わせていたのが嘘のようです。
それでも当店はバックバーをライトアップしているので、その熱でカウンター内は時に汗ばむほど暑いのですが。。。
私的には夏の暑さ+ライトの熱で汗だくになっていた季節からようやく開放されて、幾分ホッとしているというのが正直な気持ちです。
寒くなるとホットドリンクが恋しくなりますね!
それもアルコールが入っていると、身体の内側からのポカポカが持続するので、ホットカクテルのナイトキャップなどは安眠の為にも最適だと思います。
ホットカクテルにもアイリッシュ・コーヒー、ホット・バタード・ラム等色々有りますが、私のお気に入りはホット・ドラムです!
スコットランドのリキュール『ドランブイ』をお湯で割っただけのものですが、ハチミツのリッチな甘さとハーブの豊かな香りが、冷え切った身体を覆う寒さの鎖を解き、疲れた神経を癒してくれます。
この『ドランブイ』はゲール語のdram(飲む)とbuidheach(満足な)を合成した言葉で“満足すべき飲みもの”という意味で使われています。
1746年に王家秘伝のリキュールとして生まれ、その製法は今でも創業者のマッキンノン家の秘伝のレシピとなっています。
何故マッキンノン家が王家のリキュールを発売するに至ったのか。。
その経緯について簡単に書きますと…..1707年にイングランドに併合されたスコットランドは、1745年にステュアート王家のチャールズ・エドワード・ステュアートがフランスの後ろ盾により、グレンフィナンで王位継承権を争う戦を起こしました。
同年には首都エディンバラを陥落させ、その後も勝利を収め続けて一時はロンドン目前まで迫ったのですが、イングランド軍の圧倒的な兵力の前にやがて退却を余儀なくされます。
そしてついに1746年4月16日のカロデン・ミュアの戦いで、決定的な敗北を喫する事になりました。
その後チャールズはイングランド軍の追っ手を逃れる為に、ハイランド中を逃げ回る事を余儀なくされます。
チャールズの首には30000ポンドもの賞金が掛けられていたにも関わらず、スコットランド(ジャコバイト)軍は裏切る事無くチャールズを護衛し続け、やがてはスカイ島からフランスへ脱出させます。
その際に彼を護衛したハイランドの士を代表して、スカイ島の豪族ジョン・マッキンノンに褒美として王家秘伝のリキュールの製法が授けられました。
マッキンノン家は一族の酒としてその製法を子孫に伝え、200年後の1906年にようやく商品化されたのがこの『ドランブイ』です。
それ以後、今日でもマッキノン家が製造を行っています。
そしてボトルのラベルには“Prince Charles Edward’s Liqueur(チャールズ エドワード王子のリキュール)”と明記してあります。
その後もチャールズはなお祖国を奪回しようと奮闘しますが、ことごとく失敗に終わり、最後はフランスから生まれ故郷であるローマに追放され、享年67歳で亡くなりました。
チャールズはその美しい顔立ちから“ボニー・プリンス・チャーリー”と呼ばれ、有名なスコットランド民謡『マイ ボニー』は彼の事を歌っていると言われます。
のどかな曲調ですが、“海の彼方へ行ってしまったボニーを私に返して”と繰り返す歌詞は哀愁を誘います。
チャールズを女装させて召使いと偽り、イングランド兵の目を欺いてスカイ島に向かう船に乗せたフローラ・マクドナルドが、彼を想って歌っている様にも聞こえて来ます。
今日、私たちが王家の秘伝酒である『ドランブイ』を飲めるのも、このような歴史的な経緯によるものであると考えると、その奥にある悲劇や冒険等の様々な人間ドラマに思いを馳せながら味わうホット・ドラムも、また格別なのではないでしょうか。