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オーシャンの系譜(6) 宮光園から発見された記録映画 。

平成18年から山梨県甲州市が進めていた調査により、ブドウ栽培やブドウ酒醸造、観光事業に関する膨大な資料が、宮光園宮崎光太郎私邸と第一醸造所)の建物内から発見された。
明治から昭和にかけてのワインやぶどうジュースのラベル、ポスター、帳簿類、
35ミリ映画フィルム6巻、写真アルバム75冊、写真のガラス乾板100枚等の映像資料、
戦前に作られたブランデーなど、
その数、約11万点。

35ミリ映画フィルム6巻は、平成20年8月に敷地内の道具蔵から発見されたもので、上映時間は各巻15分程度。
撮影は、大正11(1922)年から昭和2(1927)年。
甲斐産商店が、東京の映画会社に委託して製作したプロモーションフィルムである。



第1~3巻 葡萄の栽培、収穫からワインの醸造・出荷までの様子。
すでに発見されていた「産業教育実写・甲州葡萄とブドウ醸造順序」という台本の映像である。
短縮版(14分)をインターネットで見ることができる。(写真は短縮版から)









下の写真の左端の人物が、宮崎光太郎の娘婿松本三良(さぶろう)(以下、敬称略)。


















下は観光ブドウ園で行われた観光団の歓迎会の様子。



一段高い台に立つ和服姿が宮崎光太郎。右の背広姿は松本三良
背景の建物は、第二醸造所である。



80年以上の映像だが、デジタル処理されて驚くほど鮮明である。

第1~3巻には、大正11(1922)年の東宮(後の昭和天皇)の山梨行啓や、大正15(1926)年の若槻礼次郎首相の宮光園視察の情景も収録されている。

第4巻 大正14(1925)年に山梨師範学校(現山梨大学)で行われた郡対抗運動会の映像。
第5巻 昭和2(1927)年10月に伏見宮殿下が宮光園を訪れた映像。
第6巻 御嶽昇仙峡を訪れた観光団を撮影した映像。

国内では、戦前のブドウ栽培やブドウ酒醸造の風景を写した動画は、現在までのところ発見されていなかっただけに、今回発見されたフィルムは、歴史的、学術的にも極めて重要な映像資料といえる。

ところで宮崎光太郎が記述した「甲斐産葡萄酒沿革」という社史が存在することは、山楽50年史に記載がある。
この「宮崎版沿革」の複写はメルシャン「ワイン資料館」、その複写の複製は国立国会図書館が所有していることが分かっている。
「宮崎版沿革」には、これまで明らかにされていない戦前の「オーシャン」の歴史が詰まっているはずである。
宮光園の11万点の資料のなかから、原本が発見されたら嬉しいことだ。

【参考図書等】
■ 三楽50年史 (三楽株式会社社史編纂室、昭和61年5月発行)
■ 甲州市HP

#オーシャン

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